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【連載第4回】
漢方によるがん治療の費用はどのくらいか

■薬価の値段は原材料の価格によるところが大きい

漢方薬は、西洋薬と違って、大量に合成できる化学物質ではありません。その原料は山野で採れる薬草(鉱物・動物もある)です。薬草のなかには栽培されるものもありますが、栽培できず天然物の採取に頼っているものも少なくありませんし、栽培に数年を要するものもあります。加えて、自然破壊あるいは採り過ぎによって資源枯渇が懸念されている薬草もあります。

こうした原材料の希少さ、栽培・採集にかかる人件費を考慮すると、漢方薬の価格は上がるべき要素が多々あります。しかし、保険制度上の漢方薬の価格(薬価)は下がり続けています。

ただし、「漢方薬」と一言で括っても、その値段はまちまちです。たとえば、低額な例では、桂皮(けいひ)・芍薬(しゃくやく)・茯苓(ぶくりょう)・桃仁(とうにん)・牡丹皮(ぼたんぴ)を配合した桂枝茯苓丸(女性の月経トラブルなどを改善する漢方薬)のエキス剤(生薬を煮出してつくった煎じ薬をインスタントコーヒーのように顆粒状にしたもの)1種類を2週間分処方した場合、保険診療で3割負担であれば、自己負担額は750円ほどです。

それに対し、高額な例では、柴胡(さいこ)・黄芩(おうごん)・半夏(はんげ)・人参(にんじん)・甘草(かんぞう)・生姜(しょうきょう)・大棗(たいそう)・猪苓(ちょれい)・茯苓・蒼朮・白朮(びゃくじゅつ)・沢瀉(たくしゃ)・桂皮を配合した柴苓湯(さいれいとう)(体の免疫反応を調整し、炎症を和らげたり、水分循環を改善したりする漢方薬)です。エキス剤1種類を2週間分処方した場合、3割負担で、自己負担額は2500円ほどになります。

こうした値段の違いは、主に原材料の価格の違いによるものですから、高額になるほど良い漢方というわけではないことに注意しましょう。

■保険適用となる「がん治療に用いられる漢方薬」はそれほど高価ではない

漢方では、体内の気(生体エネルギー)・血(血液)・水(血液以外の水分)の循環を大事にしています。というのも、気や血が澱んだり、水が滞ったりすると固形がんが発症すると考えられているのです。つまり、気の停滞や冷えが合わさってくると、全身の免疫力が低下すると捉えられているのです。そこで、がんに対する漢方薬としては、四君子湯(しくんしとう)、六君子湯(りっくんしとう)、黄耆建中湯(おうぎけんちゅうとう)、十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)、人参養栄湯(にんじんえいようとう)といった自然治癒力を高める補気剤が多く用いられます。

また、地黄・牛膝・山朱萸・山薬・車前子・沢潟・茯苓・牡丹皮・桂皮・附子を構成生薬とする牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)などの補腎剤が抗がん剤の副作用である末梢神経障害の改善に用いられています。

現在、漢方薬の多くはエキス剤になっています。そのエキス剤を中心とした漢方薬の多くは、鍼や灸、按摩などと異なり、通常の医薬品と同じように、医師の処方による医療用医薬品として保険が使えます。ですから、保険診療の場合、薬代は実際の値段の1~3割ですむことになります。たとえば、3割負担の保険では、前述の漢方薬の値段は、あくまで目安ですが、初診料を除けば、1種類のエキス剤が1週間分で200円~700円くらいとなるようです。

エキス剤ではなく、患者さんの病状に合わせて生薬の加減をしやすい煎じ薬にした場合でも保険は使用できます。ただし、煎じ薬はエキス剤より若干値段が高くなるようです。それでも、1種類の1週間分の煎じ薬は500円~1500円くらいが目安となるでしょう。

慢性疾患を抱えた患者さんは、何種類もの西洋医学の薬を飲むことになる場合があります。であれば、漢方薬のほうが低額ですむケースも多々あります。しかし、漢方薬を積極的に取り入れる医療機関が増えてきているものの、すべての医療機関が漢方薬を処方してくれるわけではありません。漢方薬を処方してもらいたい場合は、その医療機関に漢方を扱う外来が配されているのか否か、を確認してから受診するのが得策です。

【連載第1回】漢方はがんに対してどのような効果があるのか。
古くから受け継がれる漢方療法とは

【連載第2回】がん治療に漢方が本当に必要な人とは?
4つのパターンから考える

【連載第3回】がん治療にはどのような種類の漢方が効果的なのか

【連載第5回】がん治療に対する漢方を処方してくれる病院は?