中西医結合防治腫瘤(中西医結合医療によるがん治療と予防)国際会議を報告
香港大学中医薬学院主催で、漢方によるがん治療の研究成果を発表する国際会議『第6回 中西医結合防治腫瘤(中西医結合医療によるがん治療と予防)国際会議』が開催されました。
日進月歩の医療技術。しかし、がん治療の現場では現状の治療方法への手詰まり感も指摘されている。この状況を打破しようと、西洋医学の長所と中医学(漢方医学)の長所を結びつけて、新たな治療法を確立しようとする「中西医結合」の動きがグローバルなムーブメントになっているのです。
香港大学中医薬学院主催の国際会議に世界各国から医師、研究者が参加
■講演内容概略
漢方によるがん治療の研究成果を発表する国際会議「第6回中西医結合防治腫瘤(中西医結合医療によるがん治療と予防)国際会議」が香港大学中医薬学院で開かれた。オープニングは、3つのセミナー会場をぶち抜きにした巨大な会場に中国、台湾、米国などで漢方によるがん治療の研究・臨床に取り組む23人の医師・研究者が登壇。朝から大勢の医療関係者、中医師(中国での漢方医)や医学生が詰めかけました。
続いての記者発表では、香港大学中医薬学院の童瑶院長が「がん治療では手術の技術を高めても限界が来ている。がんになるのは体質が変わっているから。それを本来に戻すのが中医学の考え方。初期のがんなら抗がん剤を使わなくてもよいほど。再発防止にも効果があります。香港大学ではすでに320人の中西医師(西洋医学と中医学の両方の知識を備えている医師)を育成しています」と、アジア最高の大学とされる同大学で開かれる意義を述べました。
■患者に大きな希望の光
中国で初めて抗がん漢方薬の「天仙丸」が認可されてから27年。その小さな一滴は、今や「天仙液」となり、確実な一筋の流れとなりました。 国により状況は異なるが、手術、放射線治療、化学療法の標準治療だけでは、末期がんの治療や副作用による患者のQOL(生活の質)の低下、再発率など医療現場が抱える問題を解決できない現状は各国で共通です。西洋医学のよいところと中医学のよいところを結びつけて、よりよい解決方法を探るのは、どちらも歴史と実績がある医学だけに合理的なことでしょう。
今回の国際会議では、代表的な抗がん漢方薬の「天仙液」をはじめ、がん治療における漢方薬の効果が様々な側面から発表された。医療分野への普及には法律の壁や医師の理解など多くの障壁があるが、がん患者にとって大きな希望の光となる新たながん治療の動きは、世界レペルではすでに大きな動きとなっているようです。
▲香港大学中医薬学院主催で行われた国際会議の華々しいオープニング風景
▲開催意義を語る主催者の香港大学中医薬学院の童瑶院長
▲中西医結合医療のリーダーたちが演壇に登った(講演する王萬波教授)
▲香港大学中医薬学院では伝統的な漢方との融合が図られている(施祖榮博士)
国立台湾大学 王萬波教授
「中西医結合医療は、今後の主流」
国際会議において「天仙液ががんの再発および転移を抑制する研究」を発表した、国立台湾大学医学院微生物研究所の王萬波教授に、中西医結合がん治療の現状を聞いた。
■王教授の専門は何ですか?
私の研究は「腫瘍ウイルス」です。20年前にアメリカのパデュー大学で博士号の勉強をし、(ハーバード大学付属のダナファーバーがん研究所で研究を行いました。十数年前から国立台湾大学医学院の教授を務めています。漢方薬の研究は数年前から始めました。
■現在のがん治療の問題点は?
西洋医療では、早期がんに対し、主に化学療法などでがん細胞を殺傷する治療方法を行いますが、毒性が大きいため、がん細胞と同時に正常な細胞にも傷をつけます。近年、ターゲットを見つけて治療する分子標的治療が多く見られますが、この治療では耐性が生じる可能性があります。
■がん治療で中西医結合医療を行う意義は?
これに対して数千年の歴史のある漢方薬、特に複方(複数の薬を調合した)漢方薬でのがん治療は、副作用が少なく化学療法などにとって良い補助作用があるため、西洋医療と中医(漢方)を結合すれば良い治療効果を得られると思います。今後は中西医結合医療が主流になっていくのではないかと思います。
■今回の発表内容は?
天仙液がいかにがん細胞を殺傷するか、がん細胞の転移と血管形成抑制の臨床試験を行っていますが、実際にマウスの腫瘍の成長を抑制することが確かにできることが証明されました。現在は、天仙液が抗がん免疫力を高める効果について研究しています。
■なぜ天仙液の効果の研究を?
天仙液の研究を行っている同僚からの要請がきっかけでした。その後の研究を通して、天仙液が本当に効果あることがわかり、今日まで研究を続けました。
■日本の医療へのアドバイスは?
日本の医療は我々より高い技術を持っていると思いますが、今後は西洋医療の治療方法(分子標的治療や化学療法など)と中薬(漢方薬)を結合することによって、さらに良い治療効果が得られるのではないかと思います。
▲国立台湾大学医学院微生物研究所
王萬波教授
香港大学中医学医院 施祖榮博士に聞く
中西医結合医療の現状
「我々の研究室は、2004年に設立されました。5、6年間の努力を通して、漢方薬と西洋医薬の結合を含めてさまざまな研究を行い、ある程度の研究成果を得ています。そして、計150の研究論文を発表しています。いま臨床上では、漢方を扱っている所も多くなっています。西洋医学の医師たちが漢方のことを詳しく知っていれば、お互い協力し合うことによって、患者さんを一日でも早く治してあげられ、生活の質を高めることもできると信じています」
▲施祖榮博士