西洋医学で使用される医薬品の原料も、もともとは草木類などの天然物の生薬が利用されていたものです。
しかし、化学が飛躍的に発達した19世紀の頃から、西洋医学によって生薬に含まれる有効成分だけを抽出して精製し純化することに成功して、少ない量で確かな効能を得ることが可能になりました。さらに、成分を分析して別の材料から化学合成できるようになり、量産化や均質化が可能になったことで、西洋医療では生薬自体が使われることはほとんどなくなりました。
これに対し、漢方医学は天然物であるいくつかの生薬を配合、処方して用いる ことを伝統的に守り続けています。それには次のような理由があります。 複合薬である漢方薬は、単一成分を純化しただけの医薬品と比べ、成分数が段違いに多く、薬効成分以外のものも含まれています。それだけに、その薬理作用 は複雑で多種多彩です。
しかも、2000年以上の歴史をもつ漢方薬は、長い年月の間に無数の処方を試み、無益なものや有害なものを淘汰し、効果のある生薬、処方だけを残すという作業、つまり、臨床と経験をくり返してきました。その結果、すぐれた処方の漢方薬だけが残り、今日に継承されているのです。
■監修/孫苓献 広州中医薬大学中医学(漢方医学)博士 ・ アメリカ自然医学会(ANMA)
自然医学医師 ・ 台湾大学萬華医院統合医療センター顧問医師