
いまアメリカでは、「代替療法」の研究開発が急速に進んでいます。その大きな理由の一つとして、「医療費の高騰」があげられています。同時に、現代医療(西洋医療)では対応できなくなった諸症状、病気が多くなり、それを補完・代替するために、現代医療以外の療法が臨床の場で研究開発され、用いられているのです。また、医学が西洋医療一辺倒であったことへの反省もあります。原因不明の病気、難病に対する西洋医療への疑問、研究開発に莫大な費用がかかる、医療費が高い、慢性病にはあまり効果が上がらないなどです。そして、代替医療の中でも天然自然の薬草などを用いた漢方薬が注目されているのです。そのアメリカ漢方の最新情報を検証し、レポートします。

日本よりはるかに代替医療が進んでいるアメリカですが、その潮流をつくったのが、1992年にアメリカ国立衛生研究所(NIH)に「代替医療局」(OAM)が設立されたことです。当初の研究開発費の予算は200万ドル(約2億円)でしたが、どんどん増えて、2007年では実に1億2140万ドル(約120億円)があてられています。
代替療法というのは、なにも新しい療法を示すものではありません。世界的に各地域によって特有の療法が数多く存在し、実際に西洋医療だけではなく、代替医療を取り入れている人たちが多くいます。国連世界保健機構 (WHO)の調査によると、世界の健康管理医療の65%~80%は伝統的な医療(代替医療)と発表されています。
また、アメリカ国立衛生研究所の調査発表によると、国民の62%、つまり3分の1が過去1年間で何らかの代替医療を利用したとなっています。その代替医療の中で最も多かったのが「ヒーリング(祈り)」で、2位が「自然由来の栄養補助食品(漢方薬、ハーブなど)」となっており、次に「呼吸法」「瞑想」「カイロプラティック」「ヨガ」「マッサージ」「食餌療法」などとなっています。

代替療法は、アメリカを中心に世界的な医療の潮流となりつつあります。1992年にアメリカ国立衛生研究所内に世界的最先端医学研究施設の一つとして、代替医療局が設置され、この分野での科学的研究は急速に進み、ハーバード大学、コロンビア大学、スタンフォード大学など10ヵ所に研究センターが設置されています。現在、全米の医学校125のうち40校で学生に対する講議も始まっています。
代替医療とは具体的には、中国(漢方)医学(漢方薬療法、鍼灸(しんきゅう)、指圧、気功)、インド医学、免疫療法、薬効食品・健康食品、ハーブ療法、アロマテラピー、食事療法などですが、中には非科学的で西洋医学を実践する医師にとっては受け入れない内容もあります。けれども、代替医療の多くは既して毒性、副作用が少なく、体に負担のない療法が多く、これまで西洋医療であきらめていた難病に効果を発揮するケースもあります。薬品による副作用や決定的な治療法がない難病、生活習慣病に対する医学の問題点の解決に向け、医療の質の向上に貢献するものと期待されています。
こうした難病、生活習慣病の中でも、決定的な治療法、特効薬を見い出せないでいるガン治療に対して、アメリカ国立衛生研究所の中に代替医療局とは別に、アメリカ国立ガン研究所が設置されています。ガンは日本で死亡率のトップにありますが、アメリカでも同じです。そこで、天然自然の薬草などからつくられる漢方薬の治療効果が注目され、研究されているのです。
ガン治療においては、西洋医療の三大治療法である手術、放射線、抗ガン剤は、どれも副作用や転移の問題も解決できないでいます。そこで、アメリカ国立ガン研究所では、漢方薬によるガン治療法も研究されています。同時に、漢方薬は生活習慣病、慢性病などの予防、改善効果も認められ、研究開発が活発化しています。このように、現在、アメリカは漢方薬の研究開発では世界の最先端を進んでいます。
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